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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

若い桜の樹

2005年03月31日(木)

 旅行をしていると新聞もニュースも見ないことが多いのでなんとなくこころ穏やかです。京都ではあられに降られましたが、比叡山から湧き出すもくもくした黒雲の向こうには鮮やかな春の空がありました。咲きそうで咲かない桜の蕾をみながら、南都・奈良へ出ました。

 奈良でも寒かったでしょうとタクシーの女性の運転手さんに聞くと「ちべたかったですよ」とにっこりしていました。「ちべたい」って言うのですね。盆地の奈良の寒さは確かにまとわりつくような感じで「ちべたい」でした。

 二月堂では修仁会も終わり、山焼きのあとの若草山も黒こげの肌でちべたそうでした。それでも若い桜の樹はもう花を開き始めていました。猿沢の池の柳も緑の糸を垂らしたようにあおくなりはじめています。冬と春が交代する一週間を、ぼんやり眺めていたら幸せだろうと思いました。

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