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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

私がデジカメだ。

2010年11月15日(月)

 以前、使っていたデジカメのバッテリーを入れたままにして、調子を狂わせてしまいました。2代目を買ったのだけど、これはあまり使わず、さらに3代目を購入。イギリスに持って行ったのは、この3代目です。ですが、それっきり、あまり写真を撮っていません。

 写真が嫌いなんですか? って尋ねられることがあります。嫌いではないのですが、なんだか撮影しようという気になれない。たぶん、自分がいる場所で、撮影をすると「傍観者」的になるのが、ちょっと〜なのかもしれません。姜英淑さんが「k2旅行記」で書いていますが、撮影だけで満足してしまって、見るものも見ないという感じになることがあるからでしょうか?あと、もともと小説を書こうと思うような気質を持っていると、それそのものが傍観者的な要素を含んでいるということもあるでしょう。「私がデジカメだ」なんてね。

 今日この頃は、その「私がデジカメだ」の私の頭が、あんまり記憶をしなくなっちゃたのです。5歳のときのことなら鮮明に覚えているんだけど、昨日のことはすぐ忘れてしまう。眼も、人工水晶体を入れたほうは、曇りなく見えるけど、生まれてからずっと使っている天然のほうは、セピア色に曇っているし、これがけっこう幸せなのです。ややはた迷惑だけど。なに、面倒さえ見てくれれば、なにもかも、デジカメのように記憶して、いつまでも執念深く怒っていたり、嘆いていたりするよりはずっと幸せってものです。それに、すごく昔の5歳くらいのときの光景が、今の世の中に2重写しで見えていたりするから、それはそれですこぶる楽しいのです。

 それでもせっかく買ったカメラだから、今年の紅葉をちゃんと撮影しようと思っています。まず充電しなくっちゃね。

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