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中沢けいコラム「豆の葉」
   
 

フラッシュメモリー

2007年02月24日(土)

 1ギガなんて単位の情報が入る入れ物を個人が扱うようになるとは思いませんでした。フラッシュメモリーを豆蔵さんに教えてもらって買いました。もちろん壊れちゃったパソコンから、データを移動させるためです。

 「ぶしゅっとさせばいいだけです」というので、ぶしゅっとさしてみました。これが何かに似ている? はてなんだろうと考えていたら、植木鉢にさして使う植物の活性剤に似ているのです。で、その活性剤のかたちは病院で使っているアンプルの形をしています。アンプルは細長い首がついたガラス瓶で、首のところをぽきっと折って使います。

 でまたまた連想はとんで、昔々、母がよくアンプル型の風邪薬を飲んでいました。こちらは茶色い瓶。ガラスの首をぽきっと折ると、なんだか普通の錠剤の風邪薬よりも効き目がありそうな気がするのです。副作用があるとか、何か良くない理由で市販されなくなりました。で、フラッシュメモリーですが、パソコンにぶしゅっと挿すのではなくて、頭にちょくせつぶしゅっと挿すとか、肩のあたりにぶしゅと挿すなんてことができないかなって……まあ、出来なくてよかったのでしょう。

 (以下、ひとりごと)昨日、久しぶりに高速道路を車で走ったら左足の腿が痛い。ああ、運動不足だ。車を運転して筋肉痛になるなんて初めての経験。

猫背

2007年02月21日(水)

 ノートブックパソコンを使っているとなぜか猫背になります。それから字が小さい。目がかすんでくる。でもなぜかノートブックが使えるってうれしいなあとか思っているのは、昔、タイプライターにあこがれたから。見栄で英文タイプを練習したことがあるんです。こんなことで役にたつなんて思わなかったなあ。

 それで猫背です。もともと猫背だったのを、直したのにこれじゃあ、また猫背になっちゃう。やれやれ。万年筆はかならず二本持ってました。だからパソコンも二台持ってないとまずいなあと思うようになりました。ほんとうはデスクトップを二台、欲しいんだけど。置く場所がないからなあ。ぶつぶつ。ぶつぶつ。

昨日からそういうわけで

2007年02月19日(月)

 豆蔵さん、昨日は遅くまでありがとう。この次はかならず池袋の服部珈琲舎でコーヒー飲みましょう。それから「私をスキーに連れていって」じゃなくて、私を秋葉原につれていってください。牛丼でもハンバーガーでもいいから、腹が減ったじゃなくて、デスクトップPCじゃないと異常に肩が凝って仕事にならないのです。

 というわけでデスクトップがいかれてしまったので昨日から大わらわで、あっちこっちいじっています。で、気づいたことはペンに書き味があるように、キーボードにも叩き心地があるんだなあってことです。昨日から3台のパソコンで三つのキーボードをたたき比べている状態でしゅ。なんだ、こりゃ!どうしても赤ちゃん言葉になっちゃうぞ。わああああ。どうしようか。

豆ちゃん助けて SOS

2007年02月19日(月)

 昨日はどうもありがとうございました。しかしダイナブックはメールの受信はできっても、送信はできません。このページはうちにもともとあったノートブックパソコンで打っています。このノートブックはなぜかメールの送受信はできないのです。

 ああん、どれも帯にに短したすきに長しで、どうしいよう(泣、泣、泣、涙、涙、涙)豆ちゃん助けて!


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(豆蔵追記)
 メールの設定はその他の設定をいじったり要らないファイルを削ったりですっかり忘れておりました。
 プロバイダのページから、送信メール用のサーバーを調べて、記入すれば解決するように思います。
 あとはエラー番号を調べて、エラー番号で検索をかけて……といった按配でしょうか。
 またお邪魔した方が早いかもしれない!

姜英淑さん

2007年02月15日(木)

 ソウルから作家の姜英淑さんがお見えになりました。今年の韓国日報文学賞受賞です。日本には7月までご滞在とのことでした。お子さんもいる女性作家です。

 日本の海辺の地方でしばらく暮らしてみたいというご希望ですが、さて、海辺と言われても考えてみると日本の海辺と言っても北は北海道から南は沖縄まで、同じ海とは思えなくくらい違いがあるってことに気付きました。もっとも私は相模湾もしくは東京湾がよろしいと申し上げておきましたが。

 17キロ?もダイエットをなさったとのことで。3年前にソウルをお目にかかったときよりもずっとほっそりしていました(ああ、うらやましい)いったい何をなさったのでしょうか?ってお聞きしたらダンベル体操ですって。そんなに効き目があるのでしょうか?以前から勉強なさっていた日本語も日常生活に不自由がないくらいに上達していました。それに引き比べ私の朝鮮語は3歳児で止まったままだし……。姜英淑さんがご滞在のうちに少し上達するかしら?

 久しぶりにお目にかかって、懐かしい人のうわさ話をあれこれ。詩人のファン・ジフさんは文化庁の長官くらいの(役職名は日本と違うので)偉い人になってしまったというし、15年前ほどは、韓国作家にしては珍しい茶目っ気のあるチャン・ジョンイル氏は大学の先生になっているとのことでした。チャン・ジョンイルさんは15年前は韓国の一番の若手作家で、シンポジウムの時。文芸評論家がチャン・ジョンイルさんに質問をしたら、それには答えずに、会場から脱兎のごとく逃げ出してしまったということがありました。「逃げた!逃げた!」と質問をした文芸評論家のキム・チュエンさんが呆れ顔だったのをよく覚えています。いわゆる新世代(シンセディ)作家として一番早くに出てきた人でした。
 大学の先生になっても、学生のつまんない質問をさらりさらりと交わして、教室から脱兎のごとくに逃げ出しているのかしら?
 冬の青森でご一緒して、積もった大雪をみて「オールモスト、グロテスク(笑)」なんておしゃっていたファン・ジフさんがそんなに偉くなられては、簡単にお目にかかりたいとお願いするのはちょっと気が引けてしまい、寂しい気がしました。

 そんなこんなを、鳥鍋を突付きながら、いろいろと話し込んでいる間に東京は春の嵐が通り過ぎていました。

グラッパ

2007年02月12日(月)

 グラッパはワインを造った葡萄の絞りかすから作る蒸留酒だと聞いています。粕取り焼酎ってのがありましたけれども、あれみたいなものですね。あんまり上等とは言いがたいお酒ですけど。

 ええと二日酔いの原因というか主因はたぶんグラッパだったと思います。ほかに考えられない。ブランデーみたいに樽で寝かせたりしていない透明で、喉をつんと焼くみたいな感触があるのを飲んじゃいましたから。で、家に帰るまではしっかりしていた気がするんだけど?他人(ひと)から見たらそうじゃないのかなあ?なんだか不安。家に帰るまえに小説現代の編集部に電話しているし……。家に帰ったらおもしろいくらいに酔っ払っていました。

 思ってたよりも酔っ払っていたということが去年の秋くらいから、何度もあります。朝、おきて、ええっ、こんなに酔っ払っていたのかな?ってびっくりするくらい酔いが残っているのです。これがちょっと気持ちよくって、なんだかお得(?)な感じがする。本当ならもうとっくに覚めちゃっていいのに、おまけをもらったような感じですね(笑)それで午前中をぼうっと過ごせれば文句はないもないんだけど。そうは行かない!なんでこんなに酔っ払っているんだ(泣)って具合に家を飛び出さなくちゃならないことが多くて困っちゃいます。

 透明なグラッパを細長いグラスで飲んで、陽が沈んで行くのでもぼんやり眺めていたいなあ。今まで飲んだグラッパでいちばん美味しかったのは、ミラノの駅のワゴンで売っていたやつ。小さな瓶で、列車の中でラッパ飲みしたんですけど、さっさと眠れちゃいました。それで列車に揺られながら眠っていると胃のあたりが暖かかったの。

雪の降らない東京

2007年02月11日(日)

 一週間のご無沙汰でした。こんにちは。ずっと飯田橋に泊まっていました。あったかい冬です。なんだか4月くらいの陽気という日もありました。こんなにあったかいのに、なんで入試なんかやっているんだろう?ってへんな感じです。飯田橋の界隈は法政大学と理科大学の受験者で大混雑ですが、入試の時期の寒々しい景色というわけではなくて、もうすぐ桜が咲きそうなゆるみ方です。そういうわけで、今年の東京は「初雪はなし」という発表を気象庁がしていました。

 でもまだ雪が降らないと決まったわけじゃありません。太平洋岸を進む高気圧がぼあんとした春の雪を運んでくることがあるかもしれないなあって、予想しています。それにしても、へんてこりんな具合に寒くない冬です。この十年の間に卒業式に桜が咲くのは珍しくないということになってしまいました。やっぱり気象は変化しているみたいです。霜の朝とか、霜柱を踏むなんてこともなくなってしまいました。

 昨夜、久しぶりにお酒を飲みました。カンパリをソーダで割ったのを一杯。それから赤ワインをボトル半分くらい。最後に極め付きのグラッパを。そうしたら、目の前がぐるぐる回るくらい酔っ払ってしまいました。朝起きて、ああへんなことを言ってないといいなあってやや不安。なんかねえ、忙しいと言いたくないんですけどねえ、でも忙しい一週間でした。

二人で卒業祝い(昨日の続き)

2007年02月05日(月)

 タクシーの運転手さんに
「良い匂いですね」
 と言われたマッチの匂いは煙草を吸うときの前奏曲みたいな匂いなのですが、そう言えばマッチの匂いをしばらく嗅いでいませんでした。なにげなく擦ったマッチの匂いに私はさびしさを嗅いでいました。

 マッチは池袋東口の服部珈琲舎でもらったものでした。日芸のA君と卒業祝いをしました。A君は昨年、卒業するはずだったのですが、一年遅れの卒業制作提出になりました。私の日芸でのゼミは昨年限りでお終いのはずでしたが、A君がいたので、一年だけ延長。これでちょうど10年間、日芸にいたことになりますが、今年限りで日芸を失礼するお約束になっていたので、A君と一緒に私も卒業ということになりました。午前中にA君ひとりだけの卒業制作の面接を済ませて午後はほかの用事があったので、A君と一緒に江古田から池袋に出て、では二人で卒業祝いをしましょうということで服部珈琲舎に入ったのです。

 今の大学生はあまりコーヒーを飲みませんし、もし飲んでもドトールやスターバックスなどを利用することが多いようです。なかにはコーヒーやビールは「苦いから嫌だ」という人もいます。ある時、ゼミ生に教えてもらったのですが、ビールの苦味が旨くなったのは何歳頃からか? というアンケートがあって、それによると25歳というのが一番、回答の多い年齢だったそうです。つまり、大学生はまだ苦味を楽しむには早すぎるということでしょうか? 果たしてA君が苦味を楽しめたかどうかわかりませんが、ともかくコーヒーで卒業祝い(いや、そのまえに鰻やで、日本酒の御燗を一合飲んでいましたが)で、会計の時にレジわきにきれいに並べられていたマッチをひと箱いただいてきたわけでした。

マッチを擦る

2007年02月04日(日)

 まだ終電前だというのに、池袋のタクシー乗り場が混雑していたのは、東武東上線が不通になっていたためらしいのですが、その混雑するタクシー乗り場で、一人の男が車の前に立ちはだかって「運転手は窓を開けろ」と叫んでいました。仕立てのよさそうな上着の下から真っ白なワイシャツが覗いていましたが、ネクタイはポケットに突っ込んでいました。30代半ばというところでしょうか。男が前に立ちはだかっているので、タクシーは進むことが出来ません。乗り場の行列はだんだん長くなるばかりです。

 しばらくすると警察官が三人ほどやって来て、男を歩道の方へ連れてきました。「あんたたち、ちゃんと税金払っているんでしょ。あんたも、あんたも、それにあなたもさあ、ちゃんとおまわりさんだって税金払っているんでしょう」と男は警官に問いかけています。でも、警官に手を出そうとはしません。タクシー待ちの行列から何か声をかけた人がいた様子で、警官は行列に向かって「あおらないでくださいね」と一言、穏やかに注意。で、警官のうちの一人がそっと男のそばを離れました。近くのデパートの軒下から男の様子をしばらくうかがっていました。この警官がデパートの軒下にたたずんでいるうちに、あとの二人も少しずつ男から遠ざかって、暗い街の中に消えて行きました。あとに残った男は、まだ叫んでいます。
「彼もれっきとした第三秘書なんだ。ちゃんとした第三秘書だよ。解るでしょ。第三秘書だ」
 そうひとりで大声を上げていました。

 かなり酔っ払っているのですが、なんとなくその声の上げ方から、街頭演説の経験がありそうな気がしました。街頭で不特定多数の人を相手に声を出す時には、独特の声の張り上げ方があるのです。で、かなり酔っ払っていて、何か大声で言いたいことがあるのに、どこかで理性がちゃんと鍵を掛けていて、大事なことは言わないままでいるような、そんな管の巻き方でした。いったいどんな秘密があるのでしょう。なんだか気になる酔っ払いでした。

 男がタクシー待ちのお客の行列に向かってしきりに叫んでいるうちに、ようやく私がタクシーに乗り込む順番が来ました。バックシートに座ってタクシーが走り出してから、煙草を吸うためにマッチを擦りました。
「お客さん、マッチをお使いなんですね」
 運転手さんにそう言われました。
「マッチの匂いってなかなかいいものですね」
 とも言われました。それから喫茶店でマッチをもらうことが出来た頃のことを話しました。

   
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